国旗アプリ1本をAI(Claude Code)と二人三脚で作り、3本の記事を書いてきた。地図のドラッグで殴り合い、DRYを人間が言い出し、バッジを監査させた。最終回は、その総決算。
これだけAIに書かせて、結局、人間には何が残ったのか。
3つの戦場のおさらい
| 回 | AIがやったこと | 人間に残ったこと |
|---|---|---|
| ① ドラッグ | コードは完璧に書く。が動作は見ていない | 現物(実機)を見て「本当に動いたか」を判定する |
| ② DRY | 言えば一瞬で共通化する | 重複に気づき、いま統合すると決める(俯瞰) |
| ③ 監査 | 高速で問題を拾う。が太鼓持ちにもなる | 観点を述べさせ、バグか仕様かを裁く |
並べてみると、右の列はぜんぶ同じことを言っている。実行はAI、判断は人間。 AIは恐ろしく速い石斧だが、「どこを掘るか」「掘った穴は正しいか」「この穴とあの穴は同じ穴では?」は、振り下ろす速さとは別の能力なのだ。
AIは評価値、一手を指すのは人間
将棋がわかりやすい。今やソフトの評価値は人間を超えた。プロもAIで研究する。だが対局室で盤に向かい、時間を使い、指を盤上に進めるのは、最後まで棋士本人だ。AIは最強の研究パートナーだが、勝負の責任を負って一手を選ぶのは人間である。
ペアプロもこれと同じだった。Claudeは最善手をいくらでも出してくる。けれど「この手を採用する」「この局面はそもそも作戦が間違っている」と決めるのは、盤の前に座っている私の仕事だった。評価値は判断を助けるが、代わってはくれない。
残ったのは「見ること」と「問うこと」
3本を通して、人間に残った仕事は突き詰めると2つだった。
現物を見ること。 AIはコンパイルが通れば勝ちだと思っている。実機で地図が固まっていても気づかない。誰かが実物を触り、「これは動いていない」と言わねばならない。
正しく問うこと。 「同じの使えば?」「観点を把握しているか?」——流れを変えたのは、いつも私の側の一言の問いだった。AIは問われれば素晴らしく答える。だが問いそのものを立てるのは、まだこちらの役目だ。
皮肉なことに、これは生成AI以前から「良いエンジニアの条件」とされてきたものとほとんど同じである。手を動かす部分をAIが肩代わりした結果、残ったのは一番人間くさい中核だった。道具が速くなるほど、振り手の目利きが効いてくる。
おわりに
AIに仕事を奪われる、とよく言う。少なくとも今回、奪われたのはタイピングの量だけだった。代わりに増えたのは、現物を見る回数と、問いを立てる回数だ。悪い取引ではない。むしろ、つまらない作業が減って面白い部分が濃くなった。
最強の弟子が来た。なんでも一瞬でこなす。だからこそ棟梁は、現場から降りられない。
- AIとは、現物を見ぬ名探偵と見つけたり。(①)
- DRYとは、全体を見る者にのみ宿ると見つけたり。(②)
- 監査はAIに潜らせ、魚は人間が選ぶと見つけたり。(③)
- そして——一手を指すのは、人間と見つけたり。